高速バスの補償制度について

 

高速バスにはこれまで高速乗合バスと高速ツアーバスの2種類の運営形態があったが、2013年8月1日からは高速ツアーバスという業態は廃止され、新高速乗合バスに完全に一本化される。

それに伴い、万が一事故が起きた際の補償制度も高速ツアーバスで用いられていた制度から、高速乗合バスの補償制度に変更になる。

こちらでは、2013年7月31日までの高速ツアーバスの補償制度と同年8月1日に新高速乗合バスへ移行してからの補償について詳しくご紹介したい。

■2013年7月31日までの高速ツアーバスの補償制度のしくみ

高速ツアーバスは旅行会社が企画・主催する旅行商品の一種である。運行は貸切バス会社に委託されており、万が一の事故時には事故対応や補償などは委託された貸切バス会社が行うこととされてきた。

利用者を募集し、高速ツアーバスを企画・主催する旅行会社は旅行業約款に基づき、見舞金を支払うという立場である。

・事故時の貸切バス会社…損害賠償責任を負う。損害賠償金は貸切バス会社の加入する保険による。 ・事故時の旅行会社…見舞金の支払い。旅行会社が設定した金額が支払われる。

旅行会社の補償内容は各社の「特別補償規程」等で定められている。

例えば利用者が死亡した場合は1500万円、後遺障害がある場合45万~1,500万円(支払条件あり)、利用者が入院した場合は入院見舞金として2~20万円(入院期間により異なる)、利用者が通院を余儀なくされた場合は通院見舞いとして1~5万円といった金額が設定されていた。

■2013年8月1日以降の事故時の補償

2013年8月1日以降は、高速ツアーバスという運行形態は廃止され、高速ツアーバスを運営・主催していた旅行会社は高速バスから撤退するか、新高速乗合バス(一般乗合運送事業の許可を取得した路線バス会社)へと業態を移行することになった。新高速乗合バスへ移行した旅行会社は高速乗合バス同様に自社で運行車両を有すると同時に、損害賠償保険に加入することになる。

また、新高速乗合バス会社は条件の範囲内に限り、貸切バス会社へ運行を委託することが可能であるが、国土交通省から「高速バスの安全・安心回復プラン」に則り、高速バスに参入する貸切バス会社では、加入すべき損害賠償責任保険の対人賠償限度額を、1人当たり 8,000 万円から無制限に引き上げることも通達されている。

・2013年8月1日以降は、高速バスを運行する会社(路線バス会社)が加入する任意の損害賠償保険から利用者へ補償金が支払われる。

このように、2013年8月1日からは、万が一の事故時には高速バスの全てにおいて、運行するバス会社が直接利用者に対応することになり、利用者にとっては高速バスの信頼性、補償制度の透明性が高まることが期待できるだろう。

<参考リンク> http://www.mlit.go.jp/common/000993596.pdf