高速バスの安全への取り組み

 

2012年に関越道で発生した高速バスの事故。多数の死傷者が出たことで、全国に衝撃が走った事故であった。この事故は運転手の居眠り運転が原因と判明し、高速バスの安全運行に不信感が抱かれる事態を招いた。

こうした状況を受け、高速バスを運行する高速乗合バス(路線バス)会社や高速ツアーバスを主催する旅行会社などが、安全運行への取り組みを強化。また、国土交通省も高速バスに対する安全基準の強化に乗り出すきっかけとなった。

こちらのページでは、こうした背景の中で、利用者のもっとも気になる部分でもある高速バス各社の安全対策についてまとめてみたい。

<安全に対する教育訓練>

自社バスで高速バスを運行するバス会社では、安全運行に対する教育訓練として定期訓練、安全研修、交通安全講習会などを実施し、運転士を対象に運転技術や安全確認、安全確保の知識や技術のブラッシュアップ、法令順守の意識強化が行われている。

<車両安全対策>

自社バスを所有する高速バス運行会社が行っている車両安全対策としては、衝突被害軽減ブレーキシステムや車間距離維持、衝突防止警報装置、運転注意力モニターなどの装置の搭載などが見られる。これにより、運転士だけでなく、最新機器の技術面でも安全をサポートする体制をとっている。

<運行管理体制>

高速バスの運行全般に関して、道路状況や気象、その他の要因に対して常に情報収集し、的確な運行指示やアドバイスを行うのが「運行管理者」である。安全強化への取り組みとして365日24時間体制で運航管理者をバス営業所等に配置して、緊急の事態にも迅速に対応できる体制を整えているバス会社が増えている。

また、バス車両にドライブレコーダーやデジタル運行記録計、GPS等を搭載し、運行管理に活かしているバス会社も多い。運転士に対しては、乗務前のアルコールチェック、体調チェック、運行経路の確認や指示なども行われている。

<車両整備>

路線バス会社が運行する高速バスでは、自社の車両整備工場を有している場合も多く、年4回の法定点検と、バス会社が自主的に行う定期点検などが行われているほか、乗務前の運転士による点検、運行途中の休憩地の車両点検など、2重3重の点検実施が定められている場合もある。

以上が高速バスを運行するバス会社が行っている安全への主な取り組みである。

2013年7月末以前は、自社バスを所有せずに高速バスを主催する旅行会社は、自社商品の運行を委託する貸切バス会社が安全運行へ取組みが適切に実施されているかを判断し、委託するかどうかの選択を行うという立場である。

高速ツアーバスが新高速乗合バスに移行してからは、高速バスを運行するには自社バスを所有することになるため、上記のバス所有会社の安全への取り組みと同様の安全対策が取られるようになる。

これらの安全への取り組みも枠組みを作っただけでは意味がないが、国土交通省はこれらの取り組みが適切に実施されているかどうかなどの確認や指導を強化していく方針を打ち出している。