高速乗合バスとツアーバスの違い

 

現在多くの人が利用するようになった「高速バス」。ひとくくりに「高速バス」と呼ばれているが、実際には「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」の二種類があることをご存知だろうか?

両者は「高速道路を走行するバス」という点が共通するものの、それ以外の点では多くの点で違いが見られる。

こちらのページでは、普段意識することの少ない「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」の違いをしっかり理解していただき、今後の「高速バス」利用に活かしてもらいたい。

◆「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」の相違点はどこ?

高速乗合バスと高速ツアーバスの主な相違点は次の11点である。

1)運営会社と拠り所となる法律

2)利用者との間で結ばれる契約

3)利用の際に適用される約款

4)実際にバスを運行する会社

5)運行に使用される車両の種類

6)予約の必要性と支払い方法

7)乗車の仕方

8)乗り降りする場所

9)必ず運行されるのか

10)キャンセル料金について

11)事故対応

相違点を具体的に見ていこう。

◆1)運営会社と拠り所となる法律について

普段利用者は意識なく高速バスに乗車しているかもしれないが、高速バスを運営している(主催している)会社によって、「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」とに分類できる

路線バス会社が運営しているものが「高速乗合バス」、旅行会社が運営(主催)しているものが「高速ツアーバス」である。路線バス会社は一般乗合旅客自動車運送業であるので道路運送法、旅行会社は旅行業者として旅行業法に基づいて運営(主催)している。

◆2)利用者との間で結ばれる契約

上で述べたように、それぞれに典拠する法律が異なるため、利用者との間で結ばれる契約も異なり、高速乗合バスでは「運送契約」、高速ツアーバスでは「旅行契約」が結ばれることになる。

◆3)利用の際に適用される約款

こちらも同様に、それぞれが典拠する法律に基づいて作られた約款が適用され、高速乗合バスでは「乗合運送約款」、高速ツアーバスでは「旅行業約款」が適用される。

◆4)実際にバスを運行する会社

高速乗合バスでは、運営する「路線バス会社」が高速バスを実際に運行する。それに対し、高速ツアーバスは主催する旅行会社から依頼された「貸切バス会社」が運行を行う。

◆5)運行に使用される車両の種類

高速乗合バスに使用されるのは「乗合バス車両」、高速ツアーバスに使用されるのは「貸切バス車両」。

◆6)予約の必要性と支払い方法

両者とも予約制であるが、高速乗合バスは空席があれば当日現地で乗務員から乗車券を購入して乗車可能。高速ツアーバスは事前に主催する旅行会社へ代金を支払うことが必要になり、当日バスの乗組員に支払って乗車することはできない。

◆7)乗車の仕方

高速乗合バスは当日の手続はない。バス停から乗車すればよい。それにたいし、高速ツアーバスはしていされた受付場所で受付をする必要がある。

◆8)乗り降りする場所

高速乗合バスは路線バスと同様にバス停があるので、そこから乗車する。高速ツアーバスにはバス停はない。よって、予約時に指定された待ち合わせ場所に集合し、そこからバスに乗車する。

◆9)必ず運行されるのか

高速乗合バスは路線バス同様に、利用者の有無に関係なく決まった時間に決まったルートで運行する。一方高速ツアーバスで催行最少人数が設定されている場合は、その人数に予約人数が達しないと運行されない場合もある。

◆10)キャンセル料金について

高速乗合バスの予約をキャンセルすると払い戻し手数料(100円など)が徴収される。高速ツアーバスの場合は、予約取消手数料が徴収され、ツアーをキャンセルした時と同じように、乗車日から起算してキャンセル日が近くなればなるほど、キャンセル代が高くなる。例えば乗車前日のキャンセルだと乗車代金の40パーセントが請求されるなど。

◆11)事故対応

バスが事故にあった際の対応もそれぞれに異なる。高速乗合バスは運営会社の路線バス会社が事故処理や損害賠償の責任を負う。高速ツアーバスでは、運営(主催会社)の旅行会社ではなく、旅行会社から依頼されて実際に運行を行う貸切バス会社が事故処理や損害賠償の責任を負うことになっている。

それでは、旅行会社は無関係かというと、旅行業約款に基づいて補償金やお見舞金を支払うこともある。

ここで注意したいのは、高速ツアーバスの利用者の多くは「自分は○○旅行会社の高速ツアーバスに乗っている」という意識で乗車しているのだが、万が一の際の責任の所在は旅行会社ではなく貸切バス会社にあるという点である。

高速ツアーバスでは、ツアー募集の時点ではどの貸切バス会社が運行を請け負うのか決定していないことも多く、事前に利用する貸切バス会社の安全への取り組みなどを調べてからツアーに申し込むことができない場合もある。

以上が高速乗合バスと高速ツアーバスの主な相違点である。

利用者が特に大きな影響を受けると考えられるのは、9)必ず運行されるのか、 10)キャンセル料金について、11)事故対応、といったあたりであろうか。

特に11)事故対応は大きな事故になると、責任を追うべき路線バス会社や貸切バス会社の対応能力が問われる。高速ツアーバスの場合は、旅行会社主催のツアーに参加していても、実際に事故対応にあたるのは、運行を請け負う貸切バス会社になるということをしっかり理解しておきたい。

なお、現在「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」に次ぐ第3の高速バスとして「新高速乗合バス」という形態があり、2013年8月からは現行の高速乗合バスと高速ツアーバスがこの「新高速乗合バス」へと移行し、一本化される予定である。

こちらの詳細については別項で詳しくご紹介したい。